Tsukuba DTM blog

筑波大学作曲サークル DTM Lab. のブログ

オーケストラの作曲②(12/17)

第2部

Sacred Familyのサビ部分

こんにちは!Tsukuba DTM Lab. のDm124.comです!今回は私が12月6日に投稿した記事の内容に引き続き、私の曲"Sacred Family"のスコアを見ることでオーケストラの作曲について書いていきたいと思います。ですので、「オーケストラの作曲①」を読んでいらっしゃらないのであれば、まずそちらの記事をお読みいただくことをお勧めします。

もし本記事を読むにあたり実際の曲を聴きたい方は以下のURLからYouTubeで聴いてください。 https://www.youtube.com/watch?v=w79Pl6PD1CU

さて、これからSacred Familyのサビ20小節分を見ていきます。サビ部分は最初の9小節と最後の11小節に分けることができます。これら2つの部分は基本的に同じ旋律の繰り返しになるのですが、演奏が進むにつれて雰囲気に違いが出てきます。そのような違いも含めて解説していきたいと思います。

それではまず最初の9小節を見ていきましょう。この部分で主旋律を担当するのはピアノ、フルート、クラリネット、グロッケンです。また、所々でヴァイオリンなどの楽器も主旋律の一部を演奏しています。しかし、ここで最も重要視しているのが、ピアノの演奏に耳がいくようにすることです。ここではピアノが主役です。そのため、同じ主旋律を演奏しているフルート、クラリネットなどの音量は抑えられており、また他の楽器の音量もあまり目立っていません。このように、全体として音量を下げることにより、後に続く演奏との対比を作ろうとしています。

では、スコアの方も見ていきましょう。

楽器が多いので、ここではコード進行についてのみ分析したいと思います。まず最初のフレーズはF→C→Gm→Dmと進行します。ここは正直正確な解釈が分からないのですが、F(トニック)→C(ドミナント)→Gm(サブドミナント代理コード)→Dm(トニック代理コード)という進行だと考えています。また、F,C,Gm,Dmは順番に5度の関係があるので、何か別の名称の進行があるのでしょうか。ここのフレーズでは最初メジャーで始まり、マイナーで一区切りつける、という感じでメロディーに哀愁が漂う雰囲気が出ていると思います。

その後、B♭→Amと続きます。これは次の進行につなげるためのつなぎのような働きをしていると感じます。何となく宙ぶらりんな印象を受けますね。この後再びB♭→Amと続きますが、今度はAm→Dm→Gm→C→(F)と進行します。これはツー・ファイブ・ワンと似た進行だと思います。また、先ほどはF→C→Gm→Dmという風に5度ずつ上っていったのに対し、ここではAm→Dm→Gm→C→(F)という風に5度ずつ下がっています。このように5度の関係を利用してコード進行の上り下りを作るのも一つの作曲の技なのかもしれませんね。

次に最後の11小節を見ていきましょう。この部分では最初の9小節を引き継ぎ、似たような旋律を演奏する一方で、背景で演奏する楽器の動きを変えることでフィナーレにつなげる働きもします。実際に聞いてみるとその違いが分かると思います。

ここのコード進行について私の知識不足で正しい説明ができないかもしれませんが、頑張りたいと思います。

まず、最初の3小節ですが、F→C→C#dim→Dmと進行します。半音ずつコードが上昇していますが、これは「パッシングディミニッシュコード」と呼ばれるものだそうです。ベースの動きが比較的少ないので、全体の響きが維持されているように聴こえます。

次の4小節はB♭→Am→B♭→Am,Dm,Cと進行します。はじめは先ほど解説した9小節に対応する部分と似ていますが、4小節目でDm→Cと続きます。これはディミニッシュコードを用いた進行ではありませんが、半音ずつベースが下がることによってB♭へと緩やかにつながっています。また、最初の9小節と違うのはやはりストリングスを中心とした背景の楽器の動きでしょう。聞き比べてみると分かると思いますが、クライマックスですので今度は派手に動いています。ここら辺についてはうまく説明できません。ただ、こうできたんです(暴論)。

最後の4小節はいろいろな響きを感じると思いますが、進行はB♭→B♭→C9→C7でベースの動きはただの「サブドミナントドミナント」です。この次にFが続きます。クライマックスの最後の方のコードの動き方を抑えることで、次に続くゆったりとしたメロディーにスムーズにバトンを渡すような工夫がされています。また、サブドミナントドミナント進行を4小節にわたって行っているので、「Fに戻りたい!」という感じを存分にためていますね。C9やC7を使うことでよりオシャレな響きを作っているのもいい工夫になっていると思います。

以上がサビの部分となります。私がサビで一番意識するのが、メロディーを2回繰り返すことと、1回目と2回目で雰囲気をガラッと変えることです。これまでサビ部分のコード進行をすべて見てきましたが、前半9小節と後半11小節で似たような進行もあれば、まったく雰囲気を変える進行に変化しているものもあったことが分かると思います。

フィナーレ

さて、ここまで長いことサビ部分を見てきましたが、フィナーレは曲を終わらせるのに決して気を抜けるものではありません。ここまで盛り上げてきた感情をどういう風に維持し、余韻を残すのか、というのが一番重視されるところです。

フィナーレは前半4小節と後半6小節に分けることができます。使用楽器はピアノとストリングスのみです。なぜ一気に楽器数を絞ったのかというと、曲の一番最初に演奏したテーマを再現するためです。もし忘れているようなら曲を一番最初から聞き直してみてください。最初の8小節はピアノとストリングスしか演奏していないのが分かると思います。

下にスコアを示します。

まず前半4小節を見ていきましょう。ここは先ほども軽く触れましたが、曲の一番最初のテーマの再現となっています。しかし、曲の最初ではF→B♭→C→F,Am→Dmというようにマイナーコードに帰着する進行をしたのに対し、最後ではF→B♭→C→F,Am(Cは誤りでした)→B♭というようにメジャーコードへと進んでいます。これによって曲の最初と最後の性格に違いを生み出しています。

それでは後半6小節を見ていきましょう。B♭に進んだ後B♭→C→B♭7→Csus4→Fという進行をしています。これはサビの最後の4小節でも見られた進行と似ていると思いませんか?B♭(サブドミナント)とC(ドミナント)を行き来することで溜めを作っているのです。このような宙ぶらりんな状態を維持することで哀愁漂う感じを長続きできているのかもしれませんね。

第2部のまとめ

今まで本記事を読んでくださり、ありがとうございました!読みづらい部分もあったかと思いますが、参考になった部分は少しでもあったでしょうか。第1部に引き続き、第2部まで読んでくださった方ならお気づきかと思いますが、この曲にはあまり複雑なコード進行等が使われていません。基本はトニック、サブドミナントドミナントを使って構成されていました。中には代理コードを用いる場面もありましたが、ほとんどトニック、サブドミナントドミナントの主要なコードを使うべきところで代用されていました。

以上で私の担当回は終わりになりますが、最後に少し申し添えて終わりたいと思います。

作曲に限らず他のことでも言えることでもありますが、作曲で上達するためには知識と経験が一番の先生です。実際に学んだ知識や、聴いた曲のコード進行は実際に自分の曲で試すことによってあなたのスキルになります。わたしは中学3年生だった2018年から作曲を始めました。最初に作った曲はYouTubeにも上がっていますが、ただのコード進行のような曲でした。しかしそれ以来Sacred Familyを含め15曲を作ってきました。1曲作るごとに私の表現の幅は広がってきました。それは、使っているDAWが変わったことも要因としてありますが、私が時を経るごとに新しい表現を試していったことの影響が強いと思います。もし、本記事の読者に作曲初心者がいらっしゃるのなら、その方には現在の自分の状態に幻滅せずあきらめないで自分の表現を探求していってほしいと思います。

Be an Artist.