Tsukuba DTM blog

筑波大学作曲サークル DTM Lab. のブログ

オーケストラの作曲①(12/6)

自己紹介

こんにちは!

Tsukuba DTM Lab.所属のDm124.comです!私は主にクラシックの楽器を使用した楽曲を作成しています。最近はフル編成ではないのですが、オーケストラのための楽曲を作っているので、今回は私がどのように曲を着想し、組み立てているのか説明したいと思います。

そのため、今回は私が最近作曲した”Sacred Family”という曲を例にとり、解説したいと思います。私自身、自分の曲を分析することが初めてなので、読者の方は読みづらいと思われるところがあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。かなり細かく区切って分析しているので、第1部と第2部に分けてお話したいと思います。第1部ではイントロダクションからサビ前までを楽譜を見せながら解説していきます。

しかし、Sacred Familyがそもそもどういう曲か知らないと思いますので、まず説明を始める前に以下のURLから実際の曲を聴いてみることをお勧めします。視聴時間はおよそ4分です。

動画名:Sacred Family | Cakewalk https://www.youtube.com/watch?v=w79Pl6PD1CU

Sacred Family の着想

まず、この曲の原型がどのようにして作られたのか説明します。

私が初めにこの曲の原型を作ったのは高校生の時でした。当時、私はまだピアノ曲を作っていたので、この曲の原型はピアノスケッチとして誕生しました。しかし、当時の私の表現の幅が狭かったことで、あまり納得できるような曲にはなりませんでした。それでも、ピアノスケッチで作ったサビの部分は数年後にわたって私の記憶に残り、大学生になってこの曲を完成させることにつながりました。

ここで、軽く高校生の時に作ったサビの部分をお見せしたいと思います。

Sacred Family の構成

本作品を作るにあたり、CakewalkというDAW及びBBC Symphony Orchestra DiscoverとSpitfire LABSよりSoft Pianoの2つのプラグインを用いました。使用楽器一覧は以下になります。

【使用楽器】 ・ピアノ(Soft Piano) ・フルート ・クラリネット ・ハープ ・グロッケンシュピエール ・ホルン ・テナートロンボーン ・第1、第2ヴァイオリン ・ヴィオラ ・チェロ ・コントラバス

イントロダクション(前奏)

では、まず冒頭のイントロダクション部分を見ていきます。

このセクションではピアノとストリングスが使われています。前奏の後にピアノのソロが入るので、ピアノは抑え気味にしてストリングス中心の出だしになっています。

曲全体の曲調はヘ長調であり、コード進行はシンプルなものになっています。ここで、前奏8小節のコード進行を見てみましょう。分かりやすくするため、第1ヴァイオリンのパート譜も掲載しました。

ご覧のように、使われているコードはF(トニック)、B♭(サブドミナント)、C(ドミナント)を中心としていることが分かると思います。特に最初の4小節は、F→B♭→C→Fとなっており、「トニック→サブドミナントドミナント→トニック」の進行になっていることが分かると思います。

さらに、4小節目の中でFの次にAmを加えることで、先ほどF→B♭→C→Fと落ち着いたのを次の展開へと導いています。ここで、Am→Dmとなっていますが、Dmがトニック、Amがドミナントの関係にあるので、Dmスケールの中で「ドミナント→トニック」の進行が起きているとみなせるでしょう。

また、コード理論をよく学ばれている方なら、DmがFの代理コードであることに気づいたかもしれません(私は本記事執筆時に気づきました)。したがって、後半4小節はDm→B♭→B♭→C(→F)となっていますが、これは「トニック→サブドミナントサブドミナントドミナント(→トニック)」という進行になっているととらえることができます(9小節目でFに戻ります)。

以上より、前奏ではほぼ「トニック→サブドミナントドミナント→トニック」の進行しか使っていないことが分かると思います。また、9コードを加えるという工夫もなされているので、単純なメジャーコードを用いるよりもオシャレな響きを与えることができています。

ピアノソロから合奏への展開

さて、前奏が終わるとピアノソロ8小節が続きます。ここで奏でられる旋律がサビ前のテーマになります。

ここでピアノのメロディーとコード進行を見てみましょう。

まず、楽器の構成についてなのですが、ピアノのソロからオーケストラへ展開させるに伴い曲全体の音量もそれに合わせて小から大へと展開させたいという理由から、ピアノのソロの部分では他楽器の音量とダイナミックさを抑えています。このようにすることによって旋律の前景化と背景化を図っています。この場合ピアノが前、他楽器(ストリングス)が背景として働いています。

さて、この8小節間のコード進行はどうでしょうか。まず、この部分は前半4小節と後半4小節に分けることができます。前半4小節ではF→B♭→F→B♭となっており、これは「トニック→サブドミナント→トニック→サブドミナント→」という単純な進行です。次に後半4小節を見ていきます。C→Dmという進行は「ドミナント→トニックの代理コード」という進行になっており、前半のB♭→Fという明るい雰囲気の帰着の仕方ではなく、C→Dmと帰着することで雰囲気を暗くし不安定感を出しています。また、Gm→Cという進行も不安定感を醸し出していますが、C(ドミナント)に導くことで次の小節で再びFから始めることを可能にしています。Gm→C→Fという進行は「ツー・ファイブ・ワン」という進行に似ているため、より一層「Fに戻りたい!」という感じを出しているかもしれません。

このように最初はピアノソロから始まり、次にオーケストラが加わります。オーケストラの中では、トロンボーンがピアノと同じメロディーを、そのほかの楽器は伴奏を担当しています。先ほどのピアノソロとは異なり、音量は大きく、音の動きもダイナミックになってきたのが分かると思います。ピアノは分かってもほかの楽器がどう演奏しているのかわからないと思いますので、ここでも楽譜を見てみましょう。

 楽器が多くてどこから見ていいかわかりづらいと思いますので、楽器をグループに分けてみていきましょう。

 まず木管楽器ですが、フルートとクラリネットはピアノと同じく主旋律を吹いています。クラリネットは冒頭から吹いている一方でフルートは後半盛り上がる部分から吹き始めているのが分かるかと思います。このように木管楽器を配置したのは、木管楽器特有の柔らかい音色を主旋律で活かしたいと思ったのが主な理由です。また、フルートを後半から入れたのは最初から高音を入れすぎちゃうと徐々に盛り上げていくのが難しくなると思ったからです。

 次に金管楽器を見ていきましょう。トロンボーンは最後2小節あたりまでピアノと同じ主旋律を吹いていますが、そのあと階段を上がるようにして曲をサビへ盛り上げる働きをしています。最初なぜ主旋律を吹かせたのかというと、ピアノや木管楽器のやや高音の音量だけではあまりメロディーが前に出てこないと感じたからです。これは他の曲でも見られることですが、オクターブでメロディーを演奏するとよりメロディーが聞きやすくなるので私は曲を作るときに意識するようにしています。

ホルンは最初から他の楽器とは違う動き方をしています。八分音符-四分音符-四分音符がスラーで結ばれている箇所がいくつかあると思いますが、これらの旋律はすべて主旋律と掛け合うようなタイミングで吹かれています。こうすることでピアノソロの時のゆったりとした雰囲気とは違い、波のように主旋律が流れてくる感じを表現しています。

 最後に弦楽器です。弦楽器はコントラバスからヴァイオリンまで音域を広く占めていますが、ここでのはたらきは一貫して伴奏です。聞いていただくと分かると思いますが、弦楽器は曲全体の雰囲気を支える働きをしています。木管楽器金管楽器が主旋律や対旋律を担当しているのに対し、弦楽器は全体の雰囲気の基盤を作っている感じですね。

 さて、次はコード進行について見ていきましょう。コードはピアノのパート譜のテキストを見てください。前半4小節はピアノソロの時と全く変わりません。ここでポイントになるのは後半4小節の進行だと思います。C7はピアノソロの時とあまり響きは変わっていないのですが、Dmになった途端一気に不安定になったと思います。DmはFの代理コードともみなせるのですが、ソやミを吹く楽器もあるため実質レからラまでの白鍵すべてを弾いているのと同じです(これは何というコードなのでしょうか)。そのあとB♭となってやや安定した響きなり、C(ドミナント)となってサビの一番最初のFに導かれます。

ピアノソロの8小節とオーケストラが入ってからの8小節では後半4小節に大きな違いが見られます。これはそれぞれの4小節が次に展開しようとしているものが異なるためだと思います。ピアノソロの後半4小節は次のオーケストラの入りに展開しようとしたのに対し、オーケストラが入ってからの後半4小節は次のサビへ導くためにより一層不安定と安定との間のギャップを作り出す必要があったと考えています。

第1部まとめ

第1部ではイントロダクションからサビ前までの演奏を見ていきました。作られる曲は人によって様々ですが、イントロが終わったあとの展開が特に重要だと思います。イントロも当然視聴者を引き付けるようなものでなければならないのですが、そのあとも視聴者の関心を引き付けられるような展開が重要になってくると思います。

そのために私が意識しているのが、今回説明したような8小節+8小節という構成です。最初の8小節で主題を提示し、次の8小節でそれを発展させていくとスムーズな進行になると思います。また、コード進行で意識しているのが、後半4小節で次に展開できるようなコード進行を入れることです。今回では、後半4小節で不安定感を出して次の展開につなげていました。

以上で第1部の説明を終わります。第2部ではサビからフィナーレまでの解説をしてみたいと思います。