Tsukuba DTM blog

筑波大学作曲サークル DTM Lab. のブログ

シンセサイザーの違い【新歓Advent2026 Day7】

この記事はTsukuba DTM Lab.新歓アドベントカレンダー2026 7日目の記事です!他の記事も良ければ是非ご覧ください!

tsukubadtm.hatenablog.jp

はじめに 

TDL. 新歓アドベントカレンダーにようこそ。初めまして、24年度入会生のS to Σと申します。この記事ではシンセサイザーを主軸にしてお話していきます

以下、目次

ではいってみよう

シンセサイザーって何?

最初に、シンセサイザーとは何かについて話しておきましょう

シンセサイザーとは、偏ったDTM用語辞典によると以下のように説明されています(一部抜粋)

電気的な手法で楽音を合成する楽器であり、一台でさまざまな音を出せる事が特徴である(中略)今では楽器の1ジャンルとして「シンセサイザー」という言葉が定着している
(偏ったDTM用語辞典 - シンセサイザー)

辞典を見ると分かると思いますが、見た目的には、なんだかキーボードに似てませんかね? でもキーボードとシンセって何が違うんでしょうか?

例えば、よく軽音部のバンドではキーボードを弾いている人がよくいます。キーボーディストという人種なのですが、シンセという楽器はそれを思い浮かべる人もいるのではないのでしょうか(バンドリのほぼ必須枠だし)

あれは単純にピアノを弾いている楽器ではなく、電子音を奏でることもありますから(サカナクションでも、思いっきりキーボードが電子音を鳴らしていると思ったらアナログシンセを使っている)

それでは原初のシンセサイザーを見てみましょう

ハイドン(ダブルミーニングでもない)

画像に映っているのはシンセサイザー界隈では有名なMoog博士です。現在はMOOGという会社名に名を残しています。

見てみると何やら後ろにデカいマシンが仁王立ちしていますが、これがシンセサイザーです。キーボードとは似ても似つかない風体をしています。さらに、象徴的な「ツマミ」も一杯ありますね。
キーボードはなんと別で接続されています

でも鍵盤がついてるものも後々出てきます。なら何が違うのかというと、それは機能が違うのです

キーボードは設定した音色を流す装置ですが、シンセサイザーは音色を、合成して作り出す装置です

そもそもシンセサイザーとはSynthesys(合成する)が語源なのですから、当然と言えば当然です

音? 音色?

では、音色を合成といってもどうやって合成するのか? 何で合成するのか? まず音色はそもそも何?というのが気になると思います

そのもろもろの理由とは~~~?



(例のSE)



音の違い、音色

今日は音とはどんな現象かについて、知っておこう

これは一般的なドレミファソラシド

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幼稚園の頃から聞き覚えのある音だと思います

では、少し変わったドレミファソラシドを聞いてみましょう

こちらは弦で引いたドレミファソラシド

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最後にこれ。これはもはや楽器の音ではありません。これはノコギリ波と呼ばれる波で、形がノコギリの様なのでそう呼ばれています。

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で、この三つのドレミファソラシド、音程はすべて一緒です。しかしなんだか聞こえ方が違いますよね?

はい、この違いがよく言われる音の要素、「音色」です。いい音色だ、とか言って用いられていたこの言葉は、ちゃんと要素の名前として用いられていたんだね~

じゃ!

(例の音楽)



といって放り出すわけにはいきません。なぜ音色の話をするのかにはちゃんとした理由があるのです

音色の正体

少し数学に話題を移します。ここに三角関数のsinθで表されるサイン波(正弦波)があります

こいつを例にとると、音の要素(三つのみ)は次のように表せます

つまり音色について、サイン波の音はこういう形をしているからお聞きいただいた風に聞こえるというわけです。 では先ほど聞いた三つのドレミ(以下ryはどのような波形をしているのでしょう

左からピアノ、バイオリン、ノコギリ波です

では波形とはそういう形でしかなくて、その楽器(音源)でなければ出せない音なのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。ここに、数学者フーリエが残してくれた最強のツール「フーリエ変換」があります

詳細は省きますがこのフーリエ変換、簡単に言えば「あらゆる波形はすべてサイン波の合成であらわされる」というものです。え? 何を言っているかいまいちピンと来ない?

では百聞は一見に如かず、音を「見て」みましょう!

ここに、スペクトルアナライザーという機械(orプラグイン、コンピューター内の機械のようなもの)があります。これは受け取った波形をフーリエ変換して分解した各々のサイン波の音量を周波数ごとに表示してくれる機械です

このグラフは縦軸が音の大きさ、横軸が音の周波数すなわち音高で表されます。

で、上記三つの音色のアナライザー表示がこちら

同じ音高の音を聞いているはずなのですが、違う周波数が入り混じっていますね? そしてそれが音色ごとに違う分布になっている……

そう、これがあらゆる波形はすべてサイン波の合成であらわされる」ということです! ということは……?

楽器の音というのは、その周波数分布を真似たサイン波の集合音を鳴らすことで再現できるという事なのです!
(まぁそれがめっちゃムズイんだけどね)

試しに、ピアノをシンセで再現してみましょう。元音源の魔王魂さまから拾ってきたピアノも比較用に並べておきます

soundcloud.com

soundcloud.com

どうでしょう。粗削りですが、なんとなく似てませんか?
ただ、このためだけに波形が十何個もいる=シンセを多数使わないといけないのはちょっとめんどくさいですね(笑)

筆者のDAW サイン波を12個出すためだけにシンセサイザーを4つ立ち上げている

もっとうまいやり方があるはずなんですけどね……でももっと考えないといけないことが増える(時間変化量とか)し、面倒だし

まぁ、楽器はさっさと楽器の音を使えばいいですよね! うーん本末転倒!

補足
ちなみに、世界にはスペクトラル楽派という派閥があり、そこでは音を周波数解析して電子音で再現することを主な音楽的手法としています。人の声も再現できるらしいですよ

とはいえ周波数分布を弄ってみると謎の音色が生まれるわけですから、シンセサイザーは(ある程度の)既存の楽器の再現だけでなく、新しい音色を生み出せる「楽器」となったわけです

saw波を出せる楽器なんて他にないですからね……
あでもそういう音がライブラリにあるキーボードは流せますね。あくまで流せるだけで、それから何かに変えることはできませんが

シンセサイザーの種類

さて、ここからが本題です

なんとシンセサイザーという楽器は世界に一つではありません!

そう。一言、「周波数分布を設計する」といっても方法はいろいろあるのです

先に言っておくと、シンセサイザーには主に五種類あります。

  1. 減算方式シンセサイザー
  2. 加算合成シンセサイザー
  3. FMシンセサイザー
  4. ウェーブテーブルシンセサイザー
  5. グラニューラーシンセシス

上から順に説明していきましょう。便宜上、倍音という単語を用います。倍音とは、基音(音高の周波数の音)の整数倍または非整数次の周波数を持つ音、則ち基音以外の音の事を言います。特徴的とされる倍音は整数次倍音です

今まで音色の正体は周波数分布と呼んできましたが、正確には基音に対してどの倍音がどんな音量で含まれているか、というのが音色の根幹です。

  • 減算方式シンセサイザー

    ノコギリ波等の倍音を多量に含む波からフィルターを用いて倍音を取り除くことで音色を生み出すシンセサイザー。これ単体では新しく倍音を生み出すことができないが、有限ゆえ結果は想像しやすい
    現在のシンセサイザーの基盤となる存在。

  • 加算合成シンセサイザー

    正弦波をどんどん加算していくことで音色を作り出すシンセサイザー。すなわち無限に近い合成が可能だがそれゆえ大掛かりになりやすい。今回筆者が疑似的に再現した手法だが、大変手間がかかる。ホントに
    かつて製品として売り出される際はオルガンの体を採った

  • FMシンセサイザー

    倍音を消す、足すだけの単調な操作ではなく、FM(Freaquency Moduration)を用いた合成によって上記二つでは再現の難しかった音(非整数次倍音を含むベルとか)まで音色を生み出す幅を広げたシンセサイザー
    FMはラジオでも用いられている技術で、簡単に言うと周波数に依存した特徴的で変な波形を作り出す技術です(適当)

  • ウェーブテーブルシンセサイザー

    ウェーブテーブルという予め多彩な倍音分布が設計された波形を基に上記三つの合成方法(本当はもっとある)を行うシンセサイザー。新しい倍音分布を見つけるという点ではこれほど効率的な手段はない
    現在ダンスミュージックの中で最もメジャーなタイプのシンセサイザー

  • グラニューラーシンセシス

    音色ではなく瞬間瞬間の音に着目した、上記の方法たちとは全く発想の違う合成を行うシンセサイザー。音をグレインという単位(自分で設定可能)に分解して大量に再生したり、ランダムに再生したり、逆再生したりして新しい音を生み出す
    近年のエレクトロニカやボタニカなどで聞こえる水っぽい音を作ってる主犯はこいつ(追加でボコーダーがいる)

また、形態としてシンセサイザーにはアナログかデジタルか、ハードかソフトかというのがあります。結局は動作原理がアナログかそうでないか、実機かPC上で動くものかという簡単な違いではありますが、一応

シンセサイザーあれこれ

さて、ここまでシンセサイザーについて話してきたわけですがまだまだ一端にすぎません。本物にはさらにフィルターとエフェクターがついていますからね

フィルターはあれです。DJがシュオーンという音を出すときに使うエフェクト(?)です。どんな働きか説明したいので、とりあえず耳を塞いでみてください。

今まで聞こえていた音の、高い音域が聞こえづらくなったと思います。これがフィルターの働きで、フィルターに含まれていない周波数をカットするというものです

エフェクトはディストーションが有名でしょう。音がジャキジャキになってギターがすこぶるカッコよくなるあれです

デジタルシンセ、ソフトシンセではこれらがデフォルトでついていることが多いです。アナログシンセの頃は外付けだったというのに……

他にもエンベロープとかLFOとか…… こうした機能もあります。本格的になると音量音高音色以外にも音量の時間変化、音高の揺らぎという変数も考える必要が出てきます
今までの話は基礎の基礎というわけです

世の中には同じ種類のシンセサイザーながら、機能、デザインなどで差をつけて楽器会社がシンセサイザーを作って販売しています

減算式ならユニゾン出力数とか、モジュラーシンセならプラグを刺せる場所の多さだとか、アナログシミュレートなら「味」だとか、ウェーブテーブルならフィルターの形、プリセット波形まで細部に違いを付けています

ウェーブテーブルシンセのみに目を向けても「Serum」「Phase plant」「Current」など……金がかかるものだけでこんなに選択肢があります

で、そんな多様性戦国時代の中で似た者同士は、果たして存在する価値があるのでしょうか?(過激派)
または機能が似ていたとしても更にこだわっている場所があるのでしょうか。かつてアナログシンセで判断基準となった「味」のようなものが、デジタル、ソフトにも……?

同じことができちゃうなら「これでいいですやん」が発生するのが世の常。この度、筆者が過去に感じた疑問を基にこの命題に応えていこうと思います

Serum vs Vital

Serumという巨獣

Serum、DTMをやり始めた皆さんは聞きなじみのある、同時に憎らしくもある名前だと思います。DTMはまだこれからだという人は知らないかもしれません。serum(血清)ではありませんよ?

どういうものかというと強くなりたければこれを買えと言われるくらいチート級に強いシンセです。最近はSerum2がリリースされ、界隈ではこのシンセだけで曲は作れるとまで言わしめています

自身でエフェクトラックを組める、無限にエフェクトを掛けられる、オシレーター(波形の発振器)が三つある、フィルターの数がとんでもない、グラニューラーシンセmode搭載、スペクトル解析可能など、自己完結能力がとても高いシンセです(2の話)

ただこのシンセ、通り名が体を表したのか値段がすこぶる高い!

なんと米国ドルにて249$! 日本円に換算すると約4万円! ど、ドヒェー! とてもプラグイン一つに払う金額ではありません! Serum無印でも198$とお高い!

オーケストラ音源ライブラリ<やぁ

ヤバいシェア率強い音強いベースおまけに内蔵されたエフェクトも超強いなんて、やはりDTMはお金からなのか……

無料シンセの星 Vital

ご安心ください。Serumには対抗馬がいます。

しかも無料!

オシレーター三つ! フィルターウェーブテーブル共に多し! エフェクトも充実! その名は!

Vitalです!

https://vital.audio/

今でこそSerum2発表で曇ってしまう特徴ですが、Serumがトップを張っていた当時としては無料でほぼSerumと同じことができるとして話題になりました
なんなら、オシレーター数はSerumより多かったのです(ただしサブオシレーターの欄がその分なかったけど……)

ちなみに、Serumの国内リリースが2016年でVitalのリリースが2020年なのでバッチバチに対抗されて開発されたシンセのように思えてなりません

更にはSerumでは使いづらいランダムLFOがVitalでは使いやすく実装されているなど、Serumにはない特徴まで備えてSerum難民の希望の星になりました(VitalのランダムLFOにはStereoというキモい機能もある)

二年前、DTMを始めたての私も飛び掛かって使ったのですが……

Serumの音はSerum?

その頃ちょうど疑問に思ったことがありました

さきほど述べた通り、VitalはSerum内蔵のHyperdimentionというエフェクトがないことを除けばSerumとほほ同一の機能構造を持ちます
それをいいことにSerumでやられているチュートリアルをVitalで再現できるだろうと意気込んでいたのですが、出来た音に違いが感じ取られるのです

オシレーターもフィルターもエフェクトのかかり具合も有効数字3桁まで真似たというのにちょっと微妙な音が聞こえる……

こうしたことに疑問を感じて、TDL.のLem先輩に質問してみたことがあります

「SerumとVitalって、やっぱりSerumのほうが音がいいんですかね」

うろ覚えですが、Lemさんからは「Serumの方が音がパキッとしている感はある。逆にVitalは水っぽい」と返答されました

でも同じ波形だぞ。違いなんてあるのか?と思い、 いい機会だったので似たシンセサイザー間の違いを(タイトル回収)このブログで検証していこうと思います

簡単な比較検証

検証といってもやることは単純。SPANでスペクトル分析するだけです。条件は以下の通り

  • プラグインのOut音量は-6.0dBで合わせる
  • 倍音の出方がわかりやすいSaw波を流す
  • ランダマイズを0にして出音を一定にする

ということでハイドン(天丼)

上がVital、下がSerum2です

まず違うのはTrue Peakですね。これはデジタル信号がアナログ信号に変換された際に決定される実際の出音の最大音量(=スピーカーではPC内の音量とは異なる可能性がある)なのですが、Serum2がVitalよりも大きいですね
つまりSerum2はスピーカー音圧がVitalより高いという事です
なんならOutの音量もSerum2が僅かに大きいです

次にSerum2はVitalよりも9k ~ 13kHzの倍音成分が多い気がします。見間違いだったら恥ずかしくなってきますが、音がパリッとする原因としてはこれも妥当です

一方で5k ~ 7kHzではVitalの方が倍音が豊かでもあります
中高音域が多いという事ですからSerum2と比べると音の明るさが減るやもしれません

検証してみると、思いのほか納得できる結果に終わりました(少なくとも自分の中では)
しかしなぜ同じSaw波を流しているのに周波数分布が違うのでしょうか? VitalのAdvance機能を触っていないから? それとも企業秘密というやつでしょうか

なにあれ、Serumの音質、Vitalの音質が存在するのは間違いなさそうです

ついでにSerum2と旧Serumでも検証してみました

上がSerum2、下がSerum(1)です。

流石に同じSerum同士、周波数分布は同一のようです。ただ、True Peakは違いますね…… しかも旧型の方が高いという

終わりに

今回は「シンセサイザーの違い」と題しましたが、いかがだったでしょうか
なんだか、違いを徹底検証!というよりはシンセサイザーのさわりだけ教える記事になってしまったような気がします

ご期待に沿えたなら何よりです。沿わなかった場合、TDL.にて文句を言いに来てください。冨岡〇勇が腹を切ってお詫びします

何はともあれ、シンセサイザーはDTM、ひいては全ての音楽の友です!

シンセサイザー使って変な音出して、良きDTMライフを!

(文責:S to Σ)