Tsukuba DTM blog

筑波大学作曲サークル DTM Lab. のブログ

音楽の多様な聴き方と好みの言語化【新歓Advent2026 Day9】

この記事はTsukuba DTM Lab.アドベントカレンダー9日目の記事です!他の記事も良ければ是非ご覧ください!

tsukubadtm.hatenablog.jp

Tsukuba DTM Lab.のDaiyakiです。
J-POP、吹奏楽、クラシック、劇伴音楽と偏りはありますが様々なジャンルを楽しみつつ、インスト曲を作曲しています。

DTMサークルに入会すると必ず聞かれるであろう質問に
「どんなジャンルが好き?」「その曲のどういうところが好き?」
というものがあります。

作曲のモチベや技術には、既存の曲に対する感性が多かれ少なかれ混ざっており、メンバー同士のディープな音楽話はDiscordチャットでも対面イベントでも盛んに行われます。
また、月1-2回行われる、完成した曲のお披露目会では、みんなで曲の感想を伝えあうことで、次の作曲のモチベを生んでいます。

一方で、曲の好みに関する質問への回答は千差万別で、難解な返答に戸惑うケースも少なくありません。
また、なんとなく作曲を初めてみた人の中には、音楽を言語化することの難しさを感じる人もいると思われます。

そこで本記事では、Daiyakiがこれまで様々な作曲家・奏者、その他音楽経験者との会話を通じて体験したことを基に、音楽を聴き、感想を伝えるうえでの言語カテゴリーを幅広く雑多に紹介します。

1. 音の三要素 (大きさ、高さ、音色)

・音の大きさ

物理的には、音波の振幅が大きいことを意味します。実際には、音の高さや、他の音との被り方などによって、同じ音量でも異なる大きさに聴こえる場合があります。
音の大きさの幅のことをダイナミクスレンジといい、ダイナミクスレンジが広い映画館の音やオーケストラライブでは、大きさの変動による盛り上げ/落ち着きを感じることができます。
一方で、通勤通学時などの雑音が多い環境では、ダイナミクスレンジの小さい曲が好まれるため、市販の音源はダイナミクス幅がライブよりも小さくなっていることが多いです。
また、ロックバンドの曲やクラブミュージックでは大きな音を出すほど迫力が感じられるため、楽曲全体を通して一定以上の音の大きさを確保することが求められます。

・音の高さ

人間の耳は、可聴域(20-20000 Hz)の範囲でいろいろな高さの音を識別して聴くことができます。
また、周波数を2倍、4倍、8倍...と増やしていくと、1、2、3オクターブ上がる、ドレミファソラシ...1オクターブ高いド、といったように、音の高さの知覚には循環する感覚も存在します。

音の高さを当てる感覚は、「音感」という言葉で広く用いられ、

  • 絶対音感:音を聴いておおよその周波数を当てる感覚
  • 相対音感:ある高さの音を基準(移動ド)としたときに、どのくらい高い音かを当てる感覚

があります。
調律を自分の耳で行ったり、楽譜や口頭で見聞きした音をピアノで弾いて真似る際には絶対音感が役立ちます。
一方で、和音(コード)を感じ取ったり、伴奏のキーに対応してメロディを歌う上では相対音感が役立ちます。

近い周波数同士の音は、うなりを生じるため、不協和感を感じる人が多いです。この不協和感を逆手に取った楽曲も存在します。
逆に協和感とは音と音のうなりが少なく、まとまって聞こえる現象です。和音に対する明るい/暗いといった感覚は、物理だけでは説明がつかず、感性の領域となります。

音色の項目で後述しますが、全ての倍音は基音よりも高い音になるため、低音は和音を底から支えるといった印象があります。
そのため、低音が豊かに大きくなっている時に、重厚感のある音と表現されることがあります。

低音に対する認知の仕方やしやすさには個人差があると思われます。
クラブミュージックや太鼓のライブなどでは、ベースは空気の振動を体にも伝えることが求められ、15-80 Hzあたりの周波数を最低音として聴きます。(絶対音感寄り)
オーケストラでは編成によって最低音を担当する楽器が異なるため、コントラバスのように50 Hzあたりを最低音とすることもあれば、もっと高い音が鳴る楽器が最低音を担当することもあります。(相対音感でも低音を知覚)

Daiyakiはサークル内で楽曲の耳コピをしていて、メロディを聴いてユニゾンできるもののベースの音を聴くことに苦戦していた人を見たことがあります。
ローパスフィルターを駆使するなどして、低音のピッチを知覚できるようにトレーニングすると、和音の判別や、ベースに対するメロディの相対音的な高さなどを知覚できるようになり非常に有益です。

高音域は、特に歌や楽器の演奏では、より盛り上がっているように感じる、緊張感があるなどといった感覚があり、最高音をサビまでとっておく歌の傾向は、メロディのクライマックスに最高音を使う選択肢を持っていることを意味します。

・音色

全ての音は、振幅(大きさ)、周波数(高さ)が時間に伴い変化するサイン波が、様々な位相で重ね合わさることによって作られています。
私たちはあらゆる音楽をサイン波で識別するわけではなく、ピアノの音、リコーダーの音、〇〇さんの歌声など、ある一定の音の連なりをひとまとまりとして認知しています。
音楽を聴くときに、今どのような楽器が鳴っているかを聴き分けることを「音源分離」と言います。

楽器音の識別能力は、実際に楽器の音を個別で聴く経験をどの程度行ってきたかに依存していると思われます。様々なライブを観て、各楽器がどのような音を鳴らすかをおぼえると良いでしょう。

使う楽器によって、曲の世界観やジャンルの方向性を決める場合があります。例えばティンホイッスルはケルト音楽で用いられる楽器ですが、近年では様々なファンタジー作品のBGMに用いられるようになってきています。

楽器の演奏においては、音の出だし(アタック)や持続時の揺らぎ、音のリリースや次の音へのつなげ方などを工夫することで様々なニュアンスが生まれます。
例えば、ゆったりとした滑らかな曲では、レガートなフレーズが、マーチのリズムでは歯切れ良いスタッカートの音が伴奏で使われます。
プロの演奏家は、様々な演奏の表現を持っています。カラオケの採点でみられるビブラートなどもニュアンスを生み出す表現の一つです。

2. 音楽の三要素(リズム、メロディ、ハーモニー)

・リズム

一定の周期性を持った打音のまとまりは、リズムを作り出します。
キックが等間隔で鳴り続ける四つ打ちや、サンプリングとして利用されるアーメンブレイク、往年のロックに代表されるドッ、タッ、ドドタのリズムなど、よく使われるリズムパターンには名前が付けられています。

また、打音の強さを変えながら鳴らすことによっても、異なるリズム感を与え、同じBPMでも人によっては速く感じたり遅く感じたりします。
例えば、裏拍で強い打音をならすシンコペーションが多用される16ビートの曲は複雑さを感じさせますが、16ビートを等間隔で鳴らし続けると弦楽器のトレモロ奏法のように、忙しなさや緊迫感を感じます。

リズムは聴くうえで音感を必要とせず、ダンスや音ゲーなどマルチなジャンルで受け入れられる感覚の一つです。

・メロディ

ある楽器が特定のフレーズを吹いている時、その音のまとまりをモチーフやメロディとして認知するケースがあります。
メロディは、ピッチの変化の高さと速さによってリズムやハーモニーを作り出すこともできます。

メロディを認知するには、ある程度のリズムやピッチの知覚と記憶が必要になるため、必ずしもすべての人がメロディを憶えているとは限りません。
一方で、名曲と呼ばれる歌謡曲や合唱曲、古き良き映画音楽は、多くの人が口ずさむことのできるモチーフを持っているケースも多いです。
口ずさめるフレーズがあるということは、音楽を聴いていないときもその曲を歌うことができる点で利便性が高いです。

劇伴音楽などでは、特定のフレーズを曲の後半で再度用いることで、テーマ曲として割り当てている人物やシチュエーションなどを再度想起させることもできます。(参考:ライトモチーフ)

・ハーモニー

音楽理論を学び始めて多くの人が挫折するであろう要素。様々な音を重ねることで生まれる音の質感と、それぞれの音の機能を聴き分ける能力が求められ、特に相対音感が必要となります。
それゆえ高い精度でハーモニーを知覚できる人は音楽経験者に限られやすいものの、明るい和音、暗い和音、澄んだ和音、不気味な和音などの感性を持つことで様々な表現が可能になります。

ピアノでコードを鳴らすことでひとまとまりの音としてコードを聴く人もいれば、ある程度楽器音を分離して聴いてからコードを知覚する人もいます。
初めてハーモニーの勉強をするときは、相対音感を身につけたうえで、鍵盤を手元に置いて実際に音を鳴らしながら学習することをお勧めします。

3. 音像

人間は左耳と右耳で聞こえる音の到達時間差や音量差、音色の違いを基に、その音がどの方向から鳴っているかを予想する能力があります。
また、音が減衰や、こもり具合を基に、どのくらい遠くで鳴っている音であるかをイメージすることもできます。

耳の形は人によって千差万別であり、成長の過程で、音源の位置を特定する能力が個別に身につくとされています。
楽曲を聴くうえで、どの楽器がどこから鳴っているかを意識する一般人はほとんどいません。しかしながら、FPSなどのヘッドホン推奨のサバイバルゲームでは、プレイヤーが音を頼りに敵味方の位置を把握しており、意識さえすれば誰でも音像について感知することができます。

また、左右のスピーカーに音を分けることで音の分離感が増したり、ドラムやベースが中心に位置するとバランスが安定した音楽に感じられるはずです。

鳴った音が床や壁によって跳ね返って残響(リバーブ)として聞こえることで、その楽器が配置されている空間を想像することができます。
室内のカーテンや毛布は音を吸収しやすいので、残響が少なく楽器が近くに感じられる小編成の音楽が劇伴で良く用いられます。
一方で、世界の危機に勇者が立ち向かったりするような壮大なシーンでは、一定の残響を持った大編成の曲が使われることが多いです。
(実際には壁のない空間は地面しか音を反射しないのですが、広い空間であるという理由で残響が長めに設定される曲も多いです)

4. 音以外の情報との相互作用

その曲のジャンルと使用用途、歌詞とメロディやリズムとの関係、映像と一緒に流したときにハマるかハマらないか、BGMとして使いやすいか、そのジャンルにおいてスゴ技が披露されているか、など...
その人の経験によって他にも様々な感性が作品に働きます。どのような感性を持っているかは人によって様々です。


以上、音楽を聴くときに言語化するカテゴリーを大雑把に連ねてみました。
そのうち、上記カテゴリーを基に実際の曲の感想の書き方についても例示していけたらと思っています。

Tsukuba DTM Lab.には様々なジャンルを背景にもつ音楽愛好家が集まっています。彼らと音楽話で、今回触れた感性もまだ見ぬ感性もどんどん共有し合って、より音楽を好きになるキッカケになれればうれしいです。

(文責:Daiyaki)